2年生の教室から男性教員の太い声が聞こえてくる。「ひまわりの芽が出てたよ!」元気のよい声だ。興奮のまじった自慢げにも聞こえる声だ。子どもたちの歓声があがる。「よーく見ないとまだ分からないくらい小さな芽だよ。よく探してごらん。」
その声を聞いて、僕は頭を抱える。
彼はきっと自分の失敗に気づいていないだろう。
子どもたちが第一発見者となる大きな大きな喜びを、自分が摘み取ってしまっているという取り返しのつかない失敗を。
誰も気づかない小さな芽吹きに気づいたときの、その子の誇らしさよ。それはどんなに尊いか。
彼はそれを奪ってしまった。
いやでも聞こえてくる彼の大きな声に、僕は頭を抱えてしまった。
お気づきの人はいるだろうか。
浅はかな教員は、有馬自身だ。
あーーー、失敗した。だって、ひまわりの芽が出たのがうれしかったんだもの。
うれしいこと、やっぱり子どもたちにすぐ伝えたくなっちゃうんだもの。
すごく後悔してる。
頭抱えてる。
発芽というにはあまりに頼りない、土からようやく顔を出したばかりの芽が好きだ。こんな小さな芽が、暗闇のなかで土をかき分けて、地上に出てきたと思うと胸が熱くなる。
…という気持ちをおさえきれませんでした。
みんなごめんね。