2025年5月14日水曜日

学校

 渡り廊下を渡って北館に入ると、突き当たりの角で子どもたちが上を向きながら何やら騒いでいる様子が遠くに目に入る。

ひとりが僕に気づいて駆け寄ってくる。

「アリック、大変!大変だよ!」

息を切らして伝えてきたのは2年生。

けが人だろうか。急いでそこへ向かう。

突き当りは2年生の教室の脇。

そこには僕を呼んでくれた子も含め3人の2年生と、僕と同じく2年生に呼ばれた感じの5年生が2人。

5年生が心配そうな声で言う。

「ほら、見て」

上を指さす。

するとそこには、シジュウカラがいた。

高い窓にコツコツと細かくぶつかっている。

外廊下からここまで迷い込んでしまったのか。

窓の外に広がる林に帰ろうとするたび、窓にぶつかってしまっていて、その様子を見てすぐに胸が痛くなった。

子どもたちもどうにかしたくて、そこから離れられなくなったらしい。

「椅子をとってきて」

そのままでは届かない窓を開けるため、教室から椅子をとってきてもらう。

靴を脱いで椅子に乗ると、高い場所につけられた窓の鍵になんとか手が届く。どうにか窓を開ける。

「行けー!」とシジュウカラの背中を押すように2年生が叫ぶ。

しかし、まっすぐな2年生の言葉を裏切るように、シジュウカラは外ではなく北館の奥のほうへと飛んで行ってしまった。

僕の手が近づいたことをこわがってしまったのだ。

飛んでいくシジュウカラの下を2年生が追いかける。

「そっちじゃないよ!こっちだよ!」

なんとか回り込むと、ぴょんぴょん飛び跳ねてなんとかシジュウカラを誘導する。

するとシジュウカラがようやくもとの窓へ行き先を決めて向かってきた。

「行けー!」

2年生だけでなく、今度は5年生も僕もさけぶ。

さっきまでぶつかっていた窓はもう開いている。シジュウカラはその先に緑の見える空へと勢いよく飛び出していった。

「やったー!」

ぼくたちは自然とハイタッチをする。

「じゃあ、さようなら」

見ると2年生はランドセルを背負っていて、帰る途中だったみたい。体育着の5年生はそのまま体育館へ向かう。

僕は窓を閉じ直すために最後までそこにいる。

窓を閉めて、それから椅子を片付ける。

そこで、はだしになっていたことを思い出す。

靴を履きながら、自分が笑っていることに気づく。

(もちろん写真は撮れなかった。添付の写真はちょっと留守にしていた隙に教室に入り込みパソコンの上に行儀よくとまっていたヒヨドリ。あわてて写真に撮ったらぶれてしまった。そしてすぐに飛び立ってしまった。)