2018年5月2日水曜日

社会問題を社会の学習のスタートにする

久しぶりに授業のこと。

小学校の3、4年生の社会科では身近なことから社会的なことを学んでいく。
例えば水の学習。
教科書に沿った学習の順番だと、まずは自分が日々の生活のどのような場面で水を使っているかを調べることから学習が始まる。
その後、生活にかかせない水がどのような仕組みで届くのか、また使った後の水がどのように処理されていくかを学習していくことになる。
身の回りの生活を出発点に学びを始めていくことで、学習内容を身近なものと捉えることができ、子どもたちの学習への意欲が増すとされている。

本当にそうだろうか。

ここ、2年間、3,4年生の社会科を受け持っている。
冬休みには、両方の学年の子どもたちに、新聞記事をはじめとしたニュースのレポートを課すことにしている。
休み明けにそれを読み合う。
子どもたちの選んでくるニュースは実に様々だ。
決して、子どもたちの身の回りのことばかりが選ばれるわけではない。
いや、むしろ、子どもたちは、この世界で今現在起きている本当の問題をとりあげて、それについて自分の感じたこと、考えたことを生き生きと書いてくる。
解決していない問題だからこそ、考えたくなるのだと思う。
それはきっと子どもも大人も関係ない。

だとしたら、学習だって、身近なことからスタートするのではなく、あえて実際に現在世界で起きている解決できていない問題をスタートにすることによって、子どもの考えたいという意欲が生み出されるのではないだろうか。

そんなふうに考えて、今年の水の学習では、最初の授業で、世界各地の水不足の地域で活動するNPOのビデオを見ることにした。
アフリカの女性が、家族のために毎日8キロの道のりを20キロの水を頭にのせて往復するシーンが映し出される。残念ながら、そうまでして手に入れた水が決してきれいな水ではないのだ。
ナレーションで、きれいな水が手に入らないことで命を落とす乳幼児が多いということが話される。
子どもたちは実に真剣に画面に見入り、ナレーションをよく聞いていた。
10分弱のビデオが終わると、「もう1回見たい!」という声があがる。
その声に応えて、もう一度見せる。

それはたった1回の授業で、その後は教科書の流れに沿いながら、授業を進めている。
でも、子どもたちの意欲は、これまでの身近なことから始めた学習に比べ高いように感じている。
なぜなら、蛇口をひねると水が出る仕組みを学ぶことが、あのビデオで見た人たちを救うことにつながるかもしれないと子どもたちは考えているからだと思う。
実際に授業では、「沈殿の仕組みを、あのアフリカに作ればいいんじゃないか。」など、ビデオの内容をふれる発言が見られる。

身近なことも、実際に調査がしやすく、それを否定するわけではない。
ただ、現在起きている問題をしっかりと子どもたちに提示することには大きな意味があると考えている。
それは、繰り返しになるが、解決していない問題だからこそ、考えたくなるからだ。
子どもたちも僕たちも世界を構成する一員であり、すなわち、世界が抱える問題を解決するための一員とも言えるからだ。
その感覚を子どもたちは実直に持ち合わせているように思う。
(授業者である僕もそれを感じている。子どもたちと、社会問題をどう解決していくかを考える時間はとても楽しい。)

今年はカリキュラムと社会問題をからめながら学習・授業を進めていきたいと考えている。

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