2020年9月7日月曜日

誰かのために

 金曜日に学校の飼育活動を担当する4年生が、1年生に動物たちを紹介する時間があった。チャボとウサギとヤギが学校では飼われている。

小屋から広いスペースに出されたチャボを、4年生のSくんが慣れた手つきで抱き上げている。隣では1年生のTさんが両手を出して構えている。
Sくんはその手の上に、チャボをそっと手渡していく。
「チャボの下の胸のほうを、やさしく支えるんだよ。必ず両手でね」その言葉がとてもやさしい。
Tさんがしっかりと抱きかかえられたことを確認し、添えていた手を少しずつ離していくSくん。おとなしく抱かれているチャボ。固まっていたTさんの表情がだんだんと笑顔に変わっていく。
「ふわふわしてあったかい!」気がつくと満面の笑みのTさん。
カメラを覗く僕も、おそらく満面の笑み。
帰りがけにSくんが近づいてくる。独り言のようにつぶやく。
「Tちゃん、喜んでいたね。かわいかった。あのさ、アリック、実は今日まで僕、チャボ抱っこできなかったんだよ。僕も今日が初めての抱っこだったんだ。」
嘘のような、本当の話。



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