2020年4月12日日曜日

「校内研究・研修」で職員が変わった! 2年間で学び続ける組織に変わった小金井三小の軌跡

題名の本を読んだ。
まずは、題名に学校名が載せられていることに驚く。
そして、中身を読んでさらに驚いた。
とにかく、個人名がどんどん出てくる。
ここに書かれた話は、理想を語るために綴られた作られた物語ではないんだなと衝撃を受ける。すべて本当にあった話なんだ。

この本には、東京の都心から電車で30分くらいいったところにある、小金井市の住宅街にある、どこにでもあるような公立小学校の教員たちが、校内研究を通じて劇的に変わっていく様子が、ひとりの教員の視点で綴った日記を通じて描かれている。
その中身は誰かに何かを教えようというふうには書かれていない。
ただ、研究主任として、「楽しく学び合える職員室をつくろう」としたひとりの教員のそのときそのときの想いが日記の形で誠実に吐露されているだけだ。
なのに、そこに気づくことがある。
丁寧に添えられている注釈からは、研究を支える(引っ張るではないんだなと気づく)講師の在り方を知ることができるし、やはり日記を書いている著者の村上さんの姿からは、同僚を信じて尊重する姿勢の大切さをこれでもかと感じさせられた。
日記なので、基本は書き手の視点で書かれているけれど、そこに関わる多くの人発言と事柄を振り返る文章が多く入っているので、読む人によっては、研究を支える人の気持ちに感情移入するかもしれないし、もしくは変わっていくものに戸惑う人に共感する人もいるかもしれない。それだけ多くの人の姿と感情が丁寧に綴られているのだ。

「劇的に変わっていく」と書いたが、そのために行われたことが決して劇的でないことに考えさせられる。
カリスマ校長が来たわけでも、最先端の機器が導入されたわけでもない。
ただただ丁寧で誠実な対話で学校が、そこにいる人たちが変わっていくのだ。
それは失礼な言い方かもしれないが、泥臭いものだと感じた。

読み終わっていくつか印象的な場面がある。
まずは2017年9月、運動会の振り返りを授業の題材にしようと悩む本田先生に、中村先生がかけた言葉が、紙面を飛び出して僕の心にとびこんできた。
ああ、こういうやりとりが職員室でしたいんだ。そう思った。
そして2018年11月、注釈が内容の半分以上を占めている島津先生の気持ちが書かれているところも、なんと誠実なんだろうと驚いた。
そう、この本には、研究に参加する(巻き込まれていく)人たちの戸惑いもしっかりと書かれている。それがいいなあと感じた。実際に何かが変わっていくときに、それまでのことや自分が否定されたと感じる人は大勢いるだろう。その気持ちもちゃんと書かれているのだ。
島津さんの最後の一行が最高だ。ぜひ読んでほしい。

そして何より、2018年7月の著者の心の動きが強く心に残った。その1年前、2017年6月に「先生たちに覚悟を決めてもらおう」と書いていた著者が、そう、そのときには周りを動かそうとしていた著者が、そうではなく、自分自身が覚悟を持って向き合わなくてはいけないという思いに変わっていく心の動きに強い共感を抱いた。

読み終えて、じゃあ何をしてこうか、ということが簡単には書けない。
なぜなら、学校が変わるための魔法なんてないことが痛いほど分かるから。
同僚の教員たちの力を信じ、彼らと会話をたくさんして、自分の想いを伝えるとともに、その人たちの想いも丁寧に汲み取っていくことで、少しずつ戸惑いと背中あわせの小さな実感を積み上げていくことで、ようやく学校は変わっていく。
本当に地道なことの積み上げだ。
でも、それは、誰もができることでもある。
だからやるかやらないかなんだろう。
ああ、魔法だったらどんなによかったか。
これはあの学校だったからできたことだ、と思える内容だったらどんなに良かったことか。
言い訳で逃げていた自分に気づかずにはいられなくて、今頭を抱えている。

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